・セイコー5のカスタム(MOD)を自分でやりたい!
・どんな工具が必要なの?
・安く気軽にカスタムする方法は?
この疑問にお答えします。
筆者も独学ながら
年間100本以上のカスタムや
定期的にオーバーホールもしており、
この経験を元に方法や注意点を徹底解説していきます。
<注意点>
・本記事の内容は独学も多く、プロ目線では至らない点もあろうかと思います。
・カスタム中の破損など責任は負えませんので、あくまで参考程度とお考えください。
セイコー5のカスタム方法の概要
細かい手順の前に、
ざっくりとした流れ、必要な工具を
チェックしていきましょう。
カスタムの流れ
セイコー5のカスタムは
ざっくりこのような流れになります。
- ムーブメントを取り出す
- パーツを外す
- パーツを取りつける
- ムーブメントを戻す
細かい手順はカスタム内容に応じて
変えてもらって大丈夫です。
カスタムに必要な道具
筆者がセイコー5のカスタムで
使う工具はこんな感じです。
- オープナー
- 保持器
- 機械台
- 剣抜き
- 剣押さえ
- ピンセット
- マイナスドライバー
- バネ棒用工具
- カッター
- 圧入器&コマ
- コジアケ
上記の工具があると
針、文字盤、風防、ベゼルのカスタムが可能です。
養生用の道具や
あると便利なツールは
この後の説明で触れていきます。
カスタムできる時計の種類
今回、紹介する方法は
現行のセイコー5であれば概ね適用できるでしょう。
具体的には
以下のムーブメントが載ったセイコー5が対象です。
- 7S26
- 7S36
- 4R35
- 4R36
時計の裏を見ると
ガラスの蓋やローターに記されているので
簡単にチェックできます。
例えば、
上の写真の場合、蓋に「7S36-04N0」とありますが、
前半4ケタがムーブメント、後半4ケタがケース番号を示しています。
この場合、7S36搭載ということになります。
カスタムパーツの種類
セイコー5のカスタムパーツは
主にこんな感じです。
- 文字盤
- 針
- 風防
- ベゼル
- ベゼルインサート
- チャプターリング
- リューズ
おすすめのパーツショップについては
こちらの記事で徹底解説しています。
>>セイコー5 カスタムパーツのおすすめショップを徹底レビュー!
ムーブメントを取り出す方法
手順1.バンドの外し方
- バネ棒用の工具
ここは必須ではないですが
先にブレスバンドやベルトを
外しておいた方が後の工程で作業しやすくなります。
本体とバンドは
弓カンとバネ棒によって固定されています。
バネ棒用の工具を使うと簡単です。
天順2.うら蓋の外し方
- オープナー
- 保持器
本体を保持器で固定してオープナーで開けていきます。
裏蓋のくぼみにオープナーの爪を入れたら
オープナーの固定ネジをしっかり締めます。
反時計回りの方向に回すと裏蓋が緩みます。
手順3.リューズの外し方
- バネ棒用の工具など(I字先の工具ならOK)
I字先の工具(細い棒みたいなの)で
オシドリを軽く押しながら、リューズを引き抜きます。
押す場所は見づらいですが
点のような小さくポツッとした部分です。
手順4.ムーブメントの取り出し方
- マイナスドライバーなど
- 機械台
リューズを外すと
ムーブメントが取り出せる状態になります。
ケースにムーブメントがはめ込まれているので
マイナスドライバーのような工具で浮かせていきます。
外したムーブメントは機械台の上へ。
もし機械台がなければ、ペットボトルの蓋でも代用できます。
マイナスドライバーについては
カスタム用途なら100均の精密ドライバーで十分ですが、
オーバーホールにも使用するなら
ベルジョンがオススメです。
パーツを外す方法
手順5.針の外し方
- 剣抜き
- 文字盤保護シート
リューズを差し込み
針を0時00分の位置に動かしておきます。
文字盤の上に保護シートを置いて
剣抜きで針を外します。
保護シートなしでも良いですが、
文字盤に傷がつきやすいのでご注意ください。
手順6.文字盤の外し方
- マイナスドライバーなど
針を取った後に文字盤を外していきます。
セイコー5の文字盤は
干支足がムーブメント外側の樹脂ケースの穴2ヶ所にはまっています。
側面の隙間から
マイナスドライバーなどを入れると
文字盤が浮いて取れやすくなります。
手順7.風防の外し方
- 圧入器
- プラスチック駒
圧入器にプラスチック駒を取り付けておきます。
裏蓋は外しておき、
そこから駒を押し入れると風防が外れます。
風防はガスケットで気密性が保たれているので
外した際は、ガスケットに変形や痛みがないかチェックしておきましょう。
防水性を重視する人は
新品ガスケットも準備しておくのがベスト。
手順8.ベゼルの外し方
- コジアケ
ベゼルとケースの間にコジアケを差し込んでいきます。
何ヶ所か差し込んでいくと
ベゼル全体が浮いてきて外れやすくなります。
大体、1〜2時と7〜8時にかけて
ラチェットリングの足や爪があって
そこにコジアケが当たると
リングが壊れるかもなので気をつけましょう。
外したベゼルの内側には
黒いゴムのOリングがついているので
痛んでなければ再利用します。
ちなみに経験談ですが
コジアケはかなりピンキリで、お安いやつだと刃が入らず
無理やり押し込んで目立つ傷をつけたことがあります。
初心者は明工社の細めのタイプ(下リンク)が使いやすいと思います。
手順9.ベゼルインサートの外し方
- カッターナイフなど
セイコー5のベゼルインサートは
両面テープでベゼルに固定されているので、
カッターなど薄くて硬いものを
間に差し込んで外していきます。
手を切らないように
少しずつゆっくりしていきましょう。
パーツを取りつける方法
手順10.文字盤のつけ方
- 特になし
文字盤の取り付けは簡単で、
干支足の位置と文字盤の向きに注意しながら
はめ込んでいきます。
手順11.針のつけ方
- 剣入れ
- ロディコなど
剣入れを使って
時針、分針、秒針の順番に取り付けていきます。
垂直方向にゆっくり力を入れて押し込みます。
真横から見て水平になるようにチェックしながら
取り付けていきましょう。
傾くと針同士が干渉して動作に支障が出るのでご注意ください。
剣入れ作業であると便利なのがロディコ。
粘土みたいなもので、細かいゴミ取りにも使えます。
筆者の場合は左手でロディコで保持した針、
右手で剣入れします。
ロディコを使わずにピンセットで針を持つ場合は
針に傷がつかないように注意が必要です。
手順12.ベゼルのつけ方
- 圧入器
- プラスチック駒
まず、ラチェットリングが正しい位置にあるか、
ベゼルにOリングがついてることを確認しておきましょう。
圧入器にはベゼルサイズに合う駒をつけた状態で
少しずつ水平に負荷を加えて、はめ込みます。
カチッと音がしたら
一度スムーズに回転するか動作チェックします。
うまく回転させられない場合は、
ベゼルを外して再チャレンジしてみましょう。
手順13.風防のつけ方
- 圧入器
- プラスチック駒
風防用のガスケット、風防を準備しておき
圧入器で取り付けていきます。
ダブルドームやシングルドーム型の
サファイアガラスは球面状になっているので
斜めに入らないように、慎重に水平に力を加えていきます。
風防の種類や選び方のコツはこちらで解説してます。
>>【セイコー5 カスタム】ガラス種類とサファイア風防の選び方を徹底解説!
ムーブメントを入れる方法
手順14.ムーブメントの入れ方
- ブロワー
- マイナスドライバーなど
最初にケース内部や文字盤上に
ゴミやほこりが無いかチェックしておきます。
ブロワーがあるとホコリを飛ばすのに便利です。
ムーブメント周囲の黒いプラスチックケースを
本体ケースに優しく少しずつ嵌め込んでいきます。
マイナスドライバーなど使う際は、
ムーブメントに傷がつかないように気をつけましょう。
またリューズの位置も要注意です。
ムーブメント側とケース側のリューズ取付け位置を
正確に合わせないと、次の工程でリューズをうまくつけられません。
手順15.リューズのつけ方
- 特になし
ムーブメントをケースに格納できたら
リューズをゆっくり差し込んでいきます。
もし、スムーズに入らない場合は
作業を中断して、
ムーブメントとリューズの位置が正しいかチェックしましょう。
無理やり差し込むと抜けなくなったり
巻き芯が折れる可能性も。
手順16.うら蓋のつけ方
- オープナー
- 保持器
- シリコングリス
裏蓋を付ける際は、
ねじ込み部に汚れが無いかチェックしておきましょう。
防水性を重視する方は塗布器など使って
パッキンに専用グリスを塗っておきましょう。
手順17.ベゼルインサートのつけ方
- 両面テープなど
両面テープを使ってベゼルインサートの固定をしていきます。
カスタムパーツショップなどでベゼルインサートを購入すると
円形のテープが同梱されていることもあるので、それを使いましょう。
もし、同梱されてなければ
適当な両面テープを6~8枚に細長く切って
ベゼルに貼り付ければ十分です。
ちなみにカスタムでよく使うのは
3M社の9448Aになります。
これは業務用ロールかカッティングされたものを購入することになり、
入手しづらいかと思います。
筆者の経験では
9448Aと同様、アクリル系粘着剤の一般的な両面テープでも代用可能です。
手順18.バンドのつけ方
- バネ棒用の工具
バネ棒をバンドと弓かんに通して
ケースに固定します。
バンドを外した時のように
バネ棒用の工具を使うとラクにできます。
安くカスタムする方法
紹介していた工具を全部買うと
かなり高額になりそうだけど、
安く揃えられないかな〜
筆者がカスタムを始めた頃は
2000円くらいの工具セットを使っていました。
「まず試しにカスタムしてみたい」
という人には工具セットがおすすめです。
風防を交換するならこちらも必要です。
剣押さえは注意が必要?!
工具セットの中には
剣押さえ(針を付ける工具)が含まれないことが多いので
別に買う必要があります。
以前、筆者が買ったスタンドタイプの剣押さえ(上の写真)は
軸がブレブレ、チップ(先端の白い樹脂パーツ)のネジがイかれてるなど
使い物になりませんでした。
先端の白いチップ部分だけを手に持って
なんとか針を取り付けることはできますが、
作業しづらく、水平に針を付けにくいです。
個体差があるのかもしれませんが、
筆者的にはペンタイプの剣押さえが良いと思います。
剣押さえに限らず、安い工具は、
「まぁ使えるかな」くらいのもの。
使いやすさを求めるなら、
今回の記事で使用した工具がおすすめです。
セイコー、明工舎(日本)、ベルジョン(スイス)あたりは間違い無いでしょう。
セイコー5カスタムまとめ
今回はセイコー5のカスタムの方法をまとめました。
完成品を買うのも良いですが、
その工賃分で安い道具を買って
自由にカスタムするのもアリかなと思います。
はじめは難しいかもしれませんが
完成した時の達成感、
実用時計として使う満足感は格別です!