SARX035-箱


SARX035といえばセイコー「プレザージュ」シリーズの1つ。
グランドセイコーを意識させるような
洗練されたデザインと質感の高さが人気の理由です。


筆者も愛用していますが
袖口のSARX035を見た同僚や友人に
「あれ~、GSつけてる?」と
2、3回言われた記憶があります^^;

sarx035とsbgt237
左:SARX035(プレザージュ) 右:SBGT237(グランドセイコー)


確かに
外観はそっくりですが
GSは別格です。


ただ、SARX035は10万円未満なのに
高級時計並みに美しく仕上げられており
コスパ抜群な時計と言えるでしょう。
きっと同意見のオーナーも多いはず。


今回はSARX035に興味を持った人が
気になるであろうポイントに合わせてレビューしていきます。
ボリュームたっぷりですが
損はさせませんので、ぜひ最後まで読んでもらえたらと思います。



SARX035の概要

カラー:SARX033は白 SARX035は黒

SARX033-SARX035
左:SARX033  右:SARX035 (参考https://www.seikowatches.com/jp-ja)


SARX035はプレザージュ(PRESAGE)のプレステージラインの1つで
カラー展開は「ブラックのSARX035」と「ホワイトのSARX033」の
2種類になります。


SARX035の最大の特徴は
「良心的な価格でグランドセイコーに相通ずる仕上げの良さ」
だと筆者は考えています。


具体的なことは後で解説するとして
まずはSARX035のサイズを見ていきましょう。

サイズと重さ

  • ケース縦:46.3mm
  • ケース横:40.8mm(リューズ含まず)
  • ケース厚:11.5mm
  • 重量:約156g(純正バンド サイズ未調整の状態)


径は約40mmで使いやすいサイズですが
人によっては少し大きく感じるかもしれません。

SARX035-装着
腕周り16cmの筆者がSARX035を装着


普段の装着時の様子ですが、実際に着けると
シンプルながら存在感、重厚感をしっかり味わうことができます。


SARX035はラグ周りが腕の丸みに沿う形状で
ケースやブレスバンドは丁寧に磨かれていて滑らかな肌触りです。
1日中仕事で着けていても
ナチュラルにフィットするのでストレスなしです。

SARX035の魅力1:ザラツ研磨とダイヤシールド

SARX035-ケース
ザラツ研磨で美しい角と面を表現


ステンレス製のケースは研磨工程で
ザラツ研磨という難しい職人ワザが使われています。
SARX035はグランドセイコーと同じ研磨方法を惜しみなく使い
高級時計のような美しい「角」と「面」を表現したり、
面によってポリッシュやブラッシュ仕上げを使い分けています。


またSARX035のステンレスケースには
キズやスレが付きにくいように
セイコー独自のダイヤシールドという表面加工が施されています。
正直、効果は長年使ってみないとイマイチ分かりませんが
長く愛用できるようにというセイコーのこだわりを感じます。

snk623-ケース
1万円前後のセイコー5 SNK623のケース仕上げ


ちなみに1万円前後で買えるセイコー5の例で
SNK623の写真を載せました。
角の丸みがあり、全てポリッシュ仕上げです。
SARX035よりも研磨工程が少なく
バフがけメインの仕上げだと考えられます。

SARX035の魅力2:サファイアガラス

SARX035-針


SARX035にはフラット型のサファイアガラス風防が使用されています。
サファイアガラスの基本についてはこちらの記事で徹底解説しています。

【セイコー5 カスタム】ガラス種類とサファイア風防の選び方を徹底解説!


裏面のみに無反射コーティングを施す時計も多い中
SARX035は10万円未満のモデルでありながら
サファイアガラス風防には両面に何層ものクリアコーティングを施し、
表面にはさらに汚れ防止のコーティングまで施す徹底ぶり。
キズ・汚れ・光の反射の対策を徹底的にやり込んだ風防と言えるでしょう。


注:時計の用途やメーカーの考え方によって、あえて裏面のみコーティングしている高級ブランドもあります。

SARX035の魅力3:フェイスデザイン

sarx035


一見するとよくある時計。
でも何か強いオーラを感じるのがSARX035。

  • 上質な黒文字盤
  • 立体的なバーインデックス
  • 美しく仕上げたドルフィン針


これらが絶妙なバランスで融合し
どの角度から見ても隙がなく、強い視認性をもたらしています。
機能美を追求した結果、行き着いたデザインと言えるでしょう。


SARX035の魅力4:ブレスバンド

SARX035-ステンレスブレス
SARX035純正ブレス


このブログでは多くのセイコー5を紹介してきました。
それらと比べるのは微妙ですが
SARX035のブレスバンドの完成度は別次元です。
パッと見、シンプルな3連ブレスですが
よ~く見ると表情豊かさと緻密さに気づくことでしょう。


とりわけ中央のコマが特徴的で、
平面状の四角形で丁寧に面取りされています。
その両側のポリッシュされた細いコマが
全体の引き締め効果を担っています。


バックルはプッシュボタン付きの3つ折りタイプで、
小型の留め具とブレスの一体感が美しくまとまっています。
ベルトのサイズ調整の際は
セイコー5のようにバックル部分のバネ棒で微調整ができませんが
半分サイズのコマで調整できるようになっています。

SARX035の魅力5:価格

  • カタログ価格:110,000円(税込)
  • ネット実勢価格(2020年11月):80,000円前後

定価とネット実勢価格は上記の通りです。
8万円って聞くと高く感じますが、
機械式腕時計の相場的にはかなり安いです。


筆者がスイス時計を購入する際に色々と見比べた経験上、
10万円前後の時計で
格上ブランド並みに美しく仕上げられた時計は思いつきません。
また、この価格帯の機械式腕時計は
純正バンドを革やナイロン、ウレタン製にして
コストカットしているケースが多いようです。


一方でSARX035は8万円程度でありながら
グランドセイコーと共通する技術を使用し
高品質なブレスバンドまで付いてきます。
まさにコスパ抜群な時計と言えるでしょう。


さらに
三井アウトレットパークのセイコーショップなら
69,300円(税込)とダントツの最安値(2020年11月時点)。


ネットショップの場合
例えば楽天はタイミングによって結構ポイントがつくので
トータルで一番得する可能性もあります。

SARX035のムーブメント:6R15のスペック

SARX035-ムーブメント
SARX035ムーブメント 6R15


SARX035には6R15というムーブメントが搭載されています。
主なスペックです。

  • 精度:日差+25秒 ~ ー15秒
  • 駆動方式:自動巻(手巻つき)
  • パワーリザーブ:最大50時間
  • 振動数:6振動/秒
  • 石数:23石
  • ハック機能(秒針停止機能)付き


精度については10万円前後のスイス時計と同じくらいです。
ちなみにセイコーの3針機械式ムーブメントの序列はこんな感じです。


7S系→4R系→6R系→8L系→9S系


6Rは中堅だと思っておけばOKです。
同じプレザージュでも3万円台のモデルには
4R35が搭載されていて
6Rよりも精度やパワーリザーブが劣ります。


ちなみに8L系以上は20万以上の上位機種に搭載され、
9S系はグランドセイコー向けになるので
10万円以下のラインナップの中では間違いなく6Rが最上位となります。


〜ちょっとマニアックな話です〜
プレザージュはトライマチックという3つの技術をPRしていますが
そのうちの2つである
ダイヤショックとマジックレバーは
7S系でも搭載されています。


6R系の特徴は、
ゼンマイにspron(特殊合金)を使って
パワーリザーブを向上させたことだと考えています。
精度について、
7Sと4Rは共通のテンプで日差+35秒 ~ ー25秒
6Rは日差+25秒 ~ ー15秒と良くなっており、
パーツリストを確認するとテンプは別物になっていました。


SARX035のムーブメント:精度テスト

SARX035タイムグラファー


6R15の精度は日差+25秒 ~ ー15秒がカタログスペック。
実際の値が気になるところです。
購入時のSARX035を
タイムグラファーで計測した結果がこちら。

6R15-テスト


しばらく慣らし動作を行い、
安定した頃合いを見て計測しました。
6姿勢平均で+11秒/日という結果です。


疑っていたわけではないですが、
スペック通りの結果が出たので合格です。
ただ、筆者的にはちょっと気になる点もあり、
詳しくは後述の「SARX035の気になるところ」で書きます。

SARX035のオーバーホール

オーバーホール
写真はETA2824


機械式腕時計は長く使える分、
メンテナンスにも気を使わなければいけません。
SARX035(6R15)のオーバーホールについてです

  • 価格目安:2万円~3万円
  • 推奨時期:3~5年に一度


ベストなのは
オーバーホールの推奨の時期にメーカーや時計屋さんに
メンテナンスの相談をするのが良いでしょう。


ただ、
オーバーホールも多少のリスクはあります。
分解洗浄後に新しいオイルを差したり、新しいパーツを使って
正しく組み立てたハズでも、
ムーブメントは繊細なもので期待通りに行かない時もあります。


例えばメンテ後の方が精度が若干劣ったり、
微細な傷が付くなど。
オーバーホールを行う人の
技量にもよりますので一概には言えませんが。。。


6R15の場合は
代替用のムーブメントが比較的安価に入手できるので
オーバーホールなしで使い潰してから
ムーブメントごと入れ替える方が
リスクも少なく安上がりな場合が多いようです。
ちなみに海外サイトでは1~2万円くらいで新品6Rが販売されています
(2020年11月時点)。


長年使っていると
愛着が湧くもので、筆者は可能な限り分解清掃するようにしてます。

SARX035の革ベルト交換

SARX035-文字盤デザイン


SARX035は革ベルトがよく似合うので
いろんなベルトを付け替えて楽しめます。
筆者がハマっている革ベルトを2つ紹介していきます。

ブラウン革ベルト

SARX035-ブラウンベルト


まず1つ目は定番のブラウン。
カジュアルながら、ビジネスシーンでも使いやすいカラーです。
SARX035のラグ幅20mmに合うベルトを選びましょう。

ダークグリーン革ベルト

SARX035-レザーベルトグリーン


次に2つ目はダークグリーン。
ぱっと見、フォーマルな黒に見えますが、
濃い緑のさりげないオシャレさが魅力です。

SARX035の気になるところ

  • ムーブメントの個体差
  • サイズ

筆者的にSARX035で気になるところはこの2点です。


ムーブメントの個体差については
6R15に限らず、7S系や4R系も個体差が大きいです。
そのためスペックの日差範囲もやや広めにしているのでしょう。


今回の個体は6姿勢平均の日差が約11秒/日で
片振りの調整ももう少し頑張って欲しかったです。
ちなみに、これまで3つの6R15を測定したことがありますが
いずれも日差は10秒以内で片振りも0.5ms以内でした。


とは言え
機械式時計に求められる精度は十分クリアしています。
日常生活では問題なく使用できるので、
ケチをつけるほどではありません。


サイズについては
約40mm径は少し大きく感じるかもしれません。
個人的には38mm以内に抑えた方が
より多くの人に使いやすいかと思います。


ただ、SARX035の設計は若い働き盛りの世代も
ターゲット層にしているとのこと。
若い人にセイコーの機械式の良さを知ってもらう役割を
担っているのであれば、このサイズ感にも納得です。

SARX035レビューまとめ

結局、
一番伝えたいのはSARX035のコスパの良さです。


グランドセイコーの研磨方法や
セイコー独自の技術を惜しみ無く使った
濃い一本が10万円以下。


シンプルな3針時計が欲しくなった時に
選択肢の1つに入れてみてはいかがでしょうか。