グランドセイコーはなぜ美しいのか?
そんな疑問に対して
GSのデザイン理念である「セイコースタイル」を軸に解説していきます。
むかし、
筆者が初めてGSと対面した時のことですが、
第一印象は「意外と普通」
ところが、手に取った瞬間に
「ん???」となり、
あとはひたすら見入っていました。
当時のインパクトと、
実際に使って感じた満足感の正体を整理すると、
この2つにたどり着きます。
- 繊細で圧倒的な美しさ (←この記事で解説)
- 究極の正確さ
「究極の正確さ」についてはこちらの記事もどうぞ。
>>グランドセイコー9S65ムーブメントの評価&レビュー
この記事で説明する
GSのデザイン理念「セイコースタイル」を知ることで
3つのメリットがあります。
- GSの強いこだわりがわかる
- GSをもっと楽しめて好きになる
- 他のブランド時計と比較する時の参考になる
地味に3つ目のポイントはオススメです。
お店でブランド時計を何となく見比べるよりも
「GSはこうだけど、他はどんな仕上げなんだろう」
みたいな感じで
観察してみると面白いと思います!
長めの記事ですが
少しでもGSに興味がある人は
最後まで読んでいってくださいね。
グランドセイコーのポリシー
高級実用時計として、あるべき本当の姿は何か?
グランドセイコーは
「正確さ」「美しさ」「見やすさ」に真の価値を見出して
半世紀以上にわたり追求してきました。
現在グランドセイコーのラインナップは4つあります。
- ヘリテージコレクション
- エレガンスコレクション
- スポーツコレクション
- マスターピースコレクション
ヘリテージコレクションのメカニカルシリーズは
1960年の初代GS「57GS」から
グランドセイコーの精神を受け継いできました。
言わば、最もGSの味が濃いモデルです。
セイコースタイルとは
「セイコースタイル」とは
1967年のメカニカル「44GS」に取り入れられたデザイン思想で
「燦然とした輝き」を実現させるために
- 3つのデザイン方針
- 9つのデザイン要素
を定義したものです。
これがずっと
GSデザインの基本になっています。
セイコースタイル: 3つのデザイン方針
そもそも「燦然とした輝き」とは何でしょうか?
ググると
「キラキラとした鮮やかな輝き」と出ます。
筆者が思いつくのは
宝石や貴金属くらいです^^;
確かにそのような時計もありますが、
GSが求めたのは
「光と影のコントラスト」です。
まずはそのような観点で
「セイコースタイル」を見ていきましょう。
原文では抽象的なところもあるので
僭越ながら筆者の理解の範囲で補足しています。
セイコースタイル:デザイン方針1
【ポリシー1】
平面を主体として、平面と二次曲面からなるデザイン。三次曲面は原則として採り入れない。
引用元:「GS公式HP」https://www.grand-seiko.com/jp-ja/about/design
難しい内容ですがざっくり補足すると、
くねっとした柔らかい曲面でなくて
できるだけテーパーのような円すい形から取れる面と平面を使っています。
面や稜線によってキリッとしたシャープな造形となり
光と影のコントラストが生み出されます。
セイコースタイル:デザイン方針2
【ポリシー2】
ケース・ダイヤル・針のすべてにわたって極力平面部の面積を多くする。
引用元: グランドセイコー公式HP
インデックスや針の角を極力面取り(多面カット)して
面が多い造形にする。
様々な面の反射や直線によって
光と影のコントラストが生み出されます。
セイコースタイル:デザイン方針3
【ポリシー3】
各面は原則として鏡面とし、その鏡面からは極力歪みをなくす。
引用元: グランドセイコー公式HP
歪みが少ない鏡面により反射の質を最大限に高める。
これによって美しい光と影のコントラストが生み出されます。
以上の3つをデザイン上のポリシーとして
GSは作られています。
セイコースタイル :9つのデザイン要素
3つのポリシーをさらに具体化させたのが
「9つのデザイン要素」になります。
9つもありますが、
ざっくりいうと2つに大別されます。
- 文字盤や針関係(要素1, 2, 6, 7)
- ケースの仕上げやデザイン関係(要素3, 4, 5, 8, 9)
では順番に見ていきましょう。
1. 他のインデックスの2倍の幅を持つ12時インデックス
<デザイン要素1つ目>
2倍体の12時インデックスにより、12時-6時の縦のラインを強調することで、時刻を読み取りやすくしています
引用元:「 GS公式HP」https://www.grand-seiko.com/jp-ja/about/design
基本的に12時のインデックスが目立つように太く作られています。
そして、よく見ると
6時、9字のインデックスも太めになっているモデルが多く
縦・横のラインが意識されています。
パっと見た時に
文字盤からのメリハリが自然と伝わり、
機能面とデザイン面で高いバランスが取れた設計になっていると感じます。
2. 多面カットのインデックス
<デザイン要素2つ目>
多面カットになっているインデックスが美しくきらめくとともに正確な時を知らせています
引用元: グランドセイコー公式HP
GSは蓄光塗料を使わないモデルが多いです。
その理由は
インデックスの輝きがズバ抜けているから。
わずかな明かりしか無い所でも
光をしっかり反射するので
日中や照明下ではとてもキラキラしています。
3. 鏡面研磨されたガラス縁上面
<デザイン要素3つ目>
歪みがなく平滑な鏡面は、ザラツ研磨によって平面の歪みをなくし、平面と斜面のつなぎ目のエッジをしっかりと際立たせています。
引用元: グランドセイコー公式HP
ザラツ研磨って聞き慣れないですよね。
かんたんに言うと
ケースの面を美しい鏡面に仕上げるための下地処理のことで
かつてスイスに存在した研磨機メーカーのザラツ社が
名前の由来になっています。
難しい研磨技術で
海外の高級ブランドでも採用しているところはほとんどありません。
日本でも限られた職人しかできませんが
GSには惜しみなく使われています。
上の写真ではGS(左)とセイコー5(右)ベゼルを比べました。
わかりにくいかも知れませんが、
歪みが少ない鏡の様な反射が伝わるでしょうか。
4. 鏡面研磨されたケース平面
<デザイン要素4つ目 >
鏡面の平面が多い立体にすることで、硬く鋭い印象を作り出し、燦然と輝くケースを実現しています
引用元: グランドセイコー公式HP
鍛造&切削で成型されたケースに対して
熟練した研磨師が
「荒バフ」「ザラツ研磨」「仕上げバフ」「筋目つけ」等、
全部で数十工程の研磨を行って仕上げていきます。
約0.04mmの鋭いエッジと、美しい鏡面のメリハリにより
光と影がくっきり映ります。
もし、お店で実物を見る機会があったら
美しい鏡面、ビシッと通ったエッジも要チェックです。
5. 半ば胴に埋めたりゅうず
<デザイン要素5つ目>
半ば胴に埋まるポジションに収まったりゅうずは
引用元: グランドセイコー公式HP
手首が細くても太くても心地よい装着感を得ることができます。
手首サイズに関わらず装着感がアップしていますが、
手巻きの操作性にも配慮されています。
ちなみにクオーツモデルはリューズがやや小さい傾向にあり、
つけ心地も向上した印象があります。
6. フラットダイヤル
<デザイン要素6つ目>
フラットダイヤルは、インデックスと針、それぞれを際立たせるために徹底的に検証されたデザインです
引用元: グランドセイコー公式HP
GSは文字盤(ダイヤル)も超一級品です。
自社生産により妥協なく品質と耐久性追求しています。
例えば、
文字盤表面のクリア塗膜は
一般的なスイス高級腕時計よりも3~4倍の厚みを持たせて
色あせリスクを極めて少なくしています。
厚いクリアながら
SBGR251の繊細な放射模様の質感が伝わるでしょうか。
(カメラのスペック的に難しいですが。。。)
文字盤の加工も奥が深く、GSならではの技術を使っていたりと
マニアックな話になるので、また別の記事で取り上げていきます。
7. 多面カットの太い時分針
<デザイン要素7つ目>
時分針を多面カットにすることによって、針が美しくきらめくとともに高い視認性を確保しています
引用元: グランドセイコー公式HP
一般的なドルフィン針は
山型に折ったようなエッジが中心を通っていたり
夜光塗料が用いて視認性をあげています。
対してGSは
太くて平面的なドルフィン針を採用し、
ダイヤモンドカットで丹念に多面カットしています。
これにより様々な面から美しい輝きが生み出されています。
上の写真は、全体的に影で暗い中
針の縁の多面カット部分が自然光を反射している様子です。
GSならではの幻想的なコントラストが表現されています。
8. 接線サイドライン
<デザイン要素8つ目>
接線サイドラインが大きな曲線を描くことで、 造形の鋭い印象を和らげています
引用元: グランドセイコー公式HP
GSはエッジや線を際立たせたデザインなので
固く鋭い印象になりすぎないように
ケースのサイドラインを
大きな曲線にして全体のバランスを整えています。
9. 逆斜面形状のベゼル側面とケース側面
<デザイン要素9つ目>
逆斜面形状のベゼル側面とケース側面は、美しい影をつくり、表現ある輝きを演出します。
引用元: グランドセイコー公式HP
また、薄さを感じさせる形状にもなっています。
逆斜面形状によってくっきりと美しい影になります。
ケース側面が逆斜面になっているのは
クオーツモデルに多く採用されているイメージがあります。
機械式モデルよりも薄い上に、この造形効果によって
さらにシャープに感じます。
セイコースタイル :まとめ
GSデザインの考え方をざっくりまとめまると
- 「燦然とした輝き」を目指して光と影のコントラストを追求
- 面・線を多用した造形と研磨技術で輝きを表現
ここまで読んでくれた人は
GSが好きだったり興味がある人でしょう。
初GSを検討している人は
実物を見ることをおすすめします。
自分が求めている腕時計とGSのこだわりがマッチするでしょうか。
GSを所有している人は
セイコースタイルの項目を振り返りながら
手持ちの時計を眺めると、さらに理解と愛着が深まると思います。